試験時間が70分と長くなり、選択問題の数や構成も変更となって初年度の試験となった今回。大部分が誘導に従って考察する問題となっており、近年の傾向に従い計算量が減少している反面で細かい設問数が多く、問題文の読み取りも合わせて時間との闘いである点は変わらない。典型問題が少なく、中には国公立大の二次試験や私立大の入試などでの出題が中心となっているテーマもあり、二次対策を兼ねて幅広く対策を積んであれば解きやすいが、そうでなければ不慣れな問題の連続であったため厳しい問題となっただろう。数学ⅠA同様、問題文から解法の流れをつかんで、適切に対処する力が高得点の鍵となる。
第1問
三角関数。誘導に従い、単位円を用いて解を求める問題である。よく出題される加法定理などの公式を利用する典型問題ではないため、類似問題で対策しておきたい問題。
第2問
指数関数・対数関数。メダカの飼育に最適な水草の量について常用対数を用いて計算するという高度な日常事象題材問題。対数の式変形は複雑ではないが、適切な立式ができないと後の計算に影響するため、文章読解力が重要視される。
第3問
微分積分。導関数や極値の条件から関数の方程式やグラフの概形を決定し、定積分で表す問題。この単元で一般的に用いられる計算により答えを出せる問題はごくわずかであり、大半は極値に関する条件から式を作るもの。慣れない設問に多くの受験生が戸惑っただろう。
第4問
数列。座標平面上の格子点の個数を求める問題であり、共通テスト本試験では初めての出題である。計算量は多くないため、事前に類似した問題で解法の流れを把握しておけば解きやすいが、逆に対策が不十分だと、問題の誘導だけで解法の理解をすることは難しいため苦戦する。恒等式で文字の値を求める問題も出題されている。
第5問
統計的な推測。今年度から選択する問題の数が増加したため、実質上は新たに加わったといえる問題。正規分布や信頼区間に関する問題に加え、仮説検定の出題も見られた。内容は標準的なものであるため、学校で用いられる問題集や模試の問題で十分に練習しておきたい。
第6問
空間ベクトル。空間座標内の球面上の3点が正三角形となる条件を考察する問題。計算量がこの分野では控えめであり見た目ほど難しくはないが、突破には相応の計算力が必要である。
第7問
複素数平面。2直線が垂直に交わる条件を考察する問題。前半の計算は容易であり、基本事項が身についていれば比較的解きやすい。(3)は誘導にある式変形を上手く利用すれば計算量を抑えられる。
第7問の選択は理系の生徒には手段の1つとして有効である一方、文系は履修していないことも多く、公平性の観点からは少々の疑問も残る。また、試作問題で公表されていた二次曲線からの出題は見られなかったが、過去の数学ⅡBの試験では年により出題単元が変わった事例もあるため、今回出題されなかった単元も含めて次年度以降も注意が必要だろう。
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